2010年4月4日日曜日

6・7先住民族アイヌの権利回復署名提出行動の報告 605団体・16072筆を提出、現在705団体・20787筆に拡大

◆さる6月7日に「先住民族アイヌの権利回復を求める団体・個人署名」の政府への提出及び申し入れのために、アイヌ民族から川村シンリツ・エオリパック・アイヌ会長ら旭川アイヌ協議会のみなさん、石井ポンペさん(原住、アイヌ民族の権利を取り戻すウコチャランケの会・代表)、星野工さん(東京アイヌ協会・会長)、宇佐照代さん(レラの会)が参加し、署名呼びかけ人の辛淑玉さん(人材育成コンサルタント)、藤崎良三さん(全労協議長)、小笠原信之さん(ジャーナリスト)、谷口滋さん(前東京都同和教育研究協議会・会長)やアイヌ・ラマット実行委員会の仲間などが衆議院第2会館第3会議室に結集しました。

◆署名の受理・チャランケ(話し合い)を拒んだ日本政府

しかし事前の折衝で日本政府(内閣府・アイヌ政策推進室)は、私達の署名提出とチャランケ(話し合い)の申し入れに対して、かたくなに署名の受理すら拒みました。最終的には66日に605労組・団体、16072筆の署名を内閣府・アイヌ政策推進室に提出しましたが、チャランケ(話し合い)はかたくなに拒みました。

この署名のように先住民族アイヌの権利回復に対して日本の労働組合・市民団体などがこれほど大衆的に連帯の意志を示したのは初めてのことであり、日本政府はそれを封殺しようと意図していますが、その声は現在も拡大しています。この連帯は旭川アイヌ協議会が日本政府・日本社会の厳しいアイヌ民族差別に対峙して、累々たる先祖の犠牲に思いをはせて歴史の真実を直視することを訴え、「恩恵」でも「保護」でもない先住民族アイヌの誇りをもって権利回復を求めた決意に由来しています。

◆正しい歴史認識と先住民族の権利回復の確立を阻む日本政府の姿勢

―3・16人種差別撤廃条約委員会の勧告を「門前払い」する態度―

日本政府は私達の署名提出とチャランケ(話し合い)を拒絶する理由として、①アイヌ政策の手直しは有識者懇談会の報告書に基づいて行っている(すなわち国連宣言による権利回復などの要求は対象外)②アイヌの窓口はそれに協力している北海道アイヌ協会に一本化している③これはアイヌに関わる議員連盟の意志でもあるとの3点をあげました。

1、しかし、この有識者懇談会報告書 は、先住民族アイヌに 対する近代天皇制国家の植民地支配(歴史的不正義)を否定し、先住民族の権利に関する国際連合宣言」を参照するとしながらも、「最高法規を 踏まえるのは当然」として集団的権利を明記していない憲法を口実に「先住民族の権利に関する国連宣言」に明記された権利回 復を事実上否定しています。こうした捻じ曲げられ歴史認識と先住民族アイヌの権利回復の否定を私達は受け入れることはできません。政 府はこうした報告書をアイヌ政策見直しの基準とすることへの合意を強要し、正しい歴史認識と国連宣言に基づくアイヌの権利回復の確立 を阻もうとしています。

2、また、北海道アイヌ協会はアイヌ民族団体のうちの一つですが、他のアイヌ民族団体が同協会を民族の代表と承認したことはありません。とりわけ旭川アイヌに関しては、北海道旧土人保護法と異なる旭川旧土人保護地処分法が制定されていたように植民地支配の歴史的経緯が他のアイヌと異なり給与地問題など旭川アイヌ以外に交渉当事者の権利はありません。すでに旭川アイヌ協議会とアイヌ・ラマット実行委員会は、この給与地問題での調査・申入れを政府に行っています。

アメリカでは1つの部族が1つのnationと扱われていますが、国連宣言第19条の規定からも旭川アイヌ協議会がアイヌ政策の見直しに関与する権利があることは明白です。その権利を奪うことはできません。

3、議員連盟の意志を私達の申入れを拒む盾に使う事は、政府が先住民族アイヌを対等・平等な権利主体として認めていないことを自白しているにすぎません。アイヌ民族の国会議員は皆無であり、支配国家の議員が一方的に先住民族になりかわってその権利を奪う事ができないことは言うには及びません。さらにこの議員連盟は昨年の日本における政権交代後にはまったく活動もおこなわれておらず、会長の衆議院選挙落選後にその役員体制も決まっていません。

こうした日本政府の姿勢は、アイヌ民族の代表者の参加を拡大し、国連宣言や国際公約に基づく権利回復を吟味し実施する旨の316日の人種差別撤廃委員会の勧告をも門前払いすることも意味します。また報告書について「・・・今後、少なくとも一世代はアイヌ政策を「文化」という枠の中に閉じ 込めてしまうことになるであろう施策を次の章で提言するための・・・」(手島武雅)との指摘もあります。

◆政府の姿勢を許さず、闘いを拡大していく!

当日は、政府との折衝に協力していただいた服部良一衆議院議員(社民党)と森原秀樹政策秘書から政府の姿勢を指弾し、今後の連帯表明の挨拶をうけ、アイヌ民族から「北海道アイヌ協会への窓口一本化は認めない」(川村)「すべてのアイヌの声を受けとめて権利回復に取り組みたい」(石井)「土地を返すことは当たり前のこと」(杉村)「アイヌの声がなかなか届かないが、がんばりたい」(宇佐)「首都圏のアイヌを無視させない」(星野)などの意見がだされ、全体で代表者による署名提出の行使と共に全員による国会議員への「ローラー」オルグを行う事を決め、抗議の記者会見を行いました。(報道記事は「新聞」のページを参照)

現在も先住民族アイヌの権利回復への連帯は拡大し、719日現在で705団体、20797筆が集約されています。現在の先住民族アイヌに対する構造的差別、権利剥奪は、近代天皇制国家によって日本社会・日本人の人権意識・民主的権利意識が真っ先に奪われた結果(皇民化)であり日本人問題です。私達は正しい歴史認識を奪い返し、グーンと広がった連帯の輪をしっかりと固めて政府の姿勢を正していきたいと思います。まだまだ私達は微力ですが、さらに署名や行動へのご支援・ご協力をお願いいたします!!